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Channel: 音の味わい、人の味わい
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Pioneer PD-D9MK2を使ってみて

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今日は、入手の報告だけだったPioneer PD-D9MK2の使用レポートを。
イメージ 1
 
グロッシー(光沢)仕上製品は撮影が難しいので、メーカーから画像を拝借。
 
中古品を定価(¥140,000税込)の半額程度で入手。
 
 
拙宅のCDプレーヤーは、メリディアン(207MK2)、フィリップス(LHH300B)、ルボックス(B225)と、フィリップスのスイングアーム機構を搭載したオールドCDPが主体である。これらを、情緒性の濃いアンプにつなぎ、英国製のスピーカーを鳴らしているといえば、おおよその音傾向は察していただけるだろう。
 
しかし、時にはジャズやフュージョン系の音楽を、JBL(Ti1000)でビシっと決めたくなることもある。その用途には上記のオールドプレーヤー達は必ずしも向いていない。また、SACDディスクのキメ細かな音を最新のレベルで聴けるプレーヤーがない、というのも、この製品に興味を持った一因だ。
 
さらに、書店で立ち読みするオーディオ専門誌の組み合わせ記事にも頻繁に登場しており、少なくとも否定的な受け止められ方はされていないという事実も入手時の失望を防ぐ保険の役割を果たしてくれた。
とはいえ、デノン、マランツ以外の製品でほどほどのシステムを組もうとすると極端に選択肢が少なくなり、このPD-D9MK2あたりを取り上げざるを得ないという実情が透けてみえるのは、オーディオ業界が薄っぺらになってしまった証左か。
数的減少を補うためか、どんどん価格帯が上昇して、いまや50人の諭吉先生を並べて手に入るCDプレーヤーはミドルクラス。これでは、趣味としてのオーディオへのハードルが高すぎる。
 
PD-D9MK2に戻ろう。このCDプレーヤー、リモコンなしでは電源のON・OFF、トレイの出し入れ、再生スタートと、最小限の操作しかできない。これはちょっとやりすぎで、レビューの際に多くの人が否定的に取り上げている点である。30分を超えるような交響曲ばかりを聴くならこれでもよいが、一般的なユーザーには使いにくいと思う。
ビジュアル的には、前作の同形状シルバー仕上げよりはるかに高級感がある。シルバーだったら手を出さなかったろう。
この製品では、パイオニア独自のCD光沢面を上向きにセットする方式から、レーベル面を上にする一般的なものに変更されている。操作時にときどき間違うことはあったが、あの方式の方がパイオニアらしくて好きだ。デジタルデータの円滑化を図るレガートリンク機能はON・OFF付きで存続。
 
さて、肝心なのは音である。某評論家が「ハイエンドの気配を持った音」などと、わけのわからないレビューをしていたが、我が家の装置では格別な気難さは感じられない。オーソドックスに良い音で、誰でも容易に鳴らせる良い意味での汎用性を持った製品だと思う。心配されたハイレゾ志向の下手に鳴らすと「キツイ音」になりそうな音ではないのは何より。端的に言えば、しなやかな音か。
 
スピーカーは、エージング中の新しいKEF(Q300Vup)、アンプはラックスのL-560、L-503sはもちろん、柔らかさとは距離を置いたヤマハC2aに各種パワーアンプをつないでみたが、どの組み合わせでも嫌な音を出すことはなかった。古いアキュのペアならもっと先鋭的な面を見せてくれたかもしれないが、移動が面倒なのでまだ試していない。(^^;
 
常用しているメリディアン207MK2に比べると、音の造形はわずかにスリムになるが音の滑らかさは相当なもの。メリディアンがあくまでも豊潤で自然なたたずまいで聴かせるのに対して、PD-D9MK2は細かな粒子感を聴きとろうかという気にさせる。定位感、奥行感といった要素も、KEFの同軸スピーカーユニットという特性とも相乗して、かなり明瞭に表現してくれる。
 
そこには、「装置の存在を感じさせない」というひとつの理想形とは異なるオーディオ機器の介在感があるとも言えるのだが、「新しい機器を手に入れた」という手ごたえは、ハード好きのオーディオファンにはむしろ好感を持って迎えられる要素なのだろう。私も優れた音楽の鑑賞だけに徹しきれない半端なオーディオ好きであるから、この手ごたえは、まぁ嬉しい。
 
レガートリンク機構はハイビット化が可能な可変DACに共通する音の変化で、ONにしたときの高音の拡張感、拡散感はたしかにあるが、音楽によってはOFFモードでの音像への集中感をとりたくなることもあり、実際ユーザーレビューでは、ON派とOFF派に二分されているようだ。
 
SACDの音はCDに比べて帯域の広さからくる音場感、柔らかい空気感の付加など、よく言われる特徴を示すが、5~6年前の機器に比べて格段の差があるかといえば微妙なところで、この点は期待値に届かなかった。おそらく、この期待値そのものがSACDに対する過大な妄想であったのだろう。
3.11追記:ジャズ系のヴォーカルや伴奏楽器ではそれほど大きな違いが感じられなかったが、クラシックのヴァイオリンではキメ細かさや滑らかさがかなり練り上げられているのが確認できた。CDではまず聴けないレベルだった。
使用SACD『Concert veneziano』(カルミニョーラ/ヴェニス・バロック管弦楽団)
これは、SACDの制御技術の進歩というより、この製品の優秀さを示すものだろう。
 
この新参プレーヤーは製造年代が新しい分、各部の消耗を心配する必要がなく、極めて安定した動作をしてくれている。古い製品を抱え込んでいる者にとっては、この点がとくにありがたい。

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