EL34をプッシュプルで組んだ「YARLAND/TJ34-P」が試聴期限の一週間を我が家で過ごし、大阪の地に帰っていった。そういえば、前回のMingdaも大阪だった。中華アンプの販売店は大阪にあり、ということか。
本日は、駆動スピーカーを前回のセレッションSL-6Sから、ハーベス/HLコンパクト、タンノイ/スターリングに替えての試聴結果である。
試聴用の主要ソフトは、変わり映えしないがこんなところ。これ以外に、数枚のアナログレコードも使用し、丸2日約10時間を試聴にあてた。
①~③がクラシック系で、
①スロヴァキアフィルによるヘンデルの合奏協奏曲
②マンゼ、エッガーのコンビによるヘンデルのヴァイオリン・ソナタ
③マリア・エステルのラテンギター曲集
①スロヴァキアフィルによるヘンデルの合奏協奏曲
②マンゼ、エッガーのコンビによるヘンデルのヴァイオリン・ソナタ
③マリア・エステルのラテンギター曲集
④~⑥はジャズ系で
④スコット・ハミルトンのバラード・エッセンシャル
⑤カウント・ベーシー楽団のライブレコーディング
⑥カレル・ボエリー・トリオのブルー・プレリュード
④スコット・ハミルトンのバラード・エッセンシャル
⑤カウント・ベーシー楽団のライブレコーディング
⑥カレル・ボエリー・トリオのブルー・プレリュード
⑦~⑨は女性ヴォーカルで
⑦ダイアナ・クラールのストリングスをバックにした曲集
⑧ダイアナ・パントンの月と星のうた
⑨リディア・ボルダのアルゼンチンタンゴ・ヴォーカル
⑦ダイアナ・クラールのストリングスをバックにした曲集
⑧ダイアナ・パントンの月と星のうた
⑨リディア・ボルダのアルゼンチンタンゴ・ヴォーカル
●HLコンパクト編
このHLコンパクト、中音量以上では帯域バランスが整うが、それ以下だと低域の量感が不足して、もっと小さなブックシェルフのような響きになる傾向がある。これに厚みと重みを加えて、深夜の音量でも中型らしい充実した音を鳴らしたい、というのがPPアンプを組み合わせるねらいである。
ここでの「TJ34-P」だが、最初のSL-6Sで聴かれた輝きすぎやモタつきはほとんど感じられないものの、影響力としてはわずかに響きの厚みが増してねらった音に近づく。が、まだ十分ではない。高域がきれいに抜け、①②の弦が美しい。これがないと、手元に置いて鳴らす気になれない必須の要素だが、その点は合格だ。
④⑤の迫力、ゆとり感はもうひとつ。⑥のピアノも少々軽い。このあたりは、アンプのせいではなく、スピーカーの特質だろう。⑦⑧の声の艶、陰影、拡散といった点はまずまずか。
ただ、この程度の改善ならあえて新しいアンプを購入する動機にはならない。
④⑤の迫力、ゆとり感はもうひとつ。⑥のピアノも少々軽い。このあたりは、アンプのせいではなく、スピーカーの特質だろう。⑦⑧の声の艶、陰影、拡散といった点はまずまずか。
ただ、この程度の改善ならあえて新しいアンプを購入する動機にはならない。
●スターリング編
さて、タンノイではどうだろうというのが最終試験だ。これは、予想をはるかに上回る相性の良さを見せた。①②のクラシックらしい弦の擦れる音が生々しく展開し、低音の沈み込みも十分。チェンバロは典雅に浮遊し、音像の肥大が心配された⑤のギターソロは、張りのある明るい音色を響かせた。
⑤の1曲目は、ソロ楽器とバンドの全奏が混在して試聴には格好だが、音の迫力という点でも、我が家では十分以上。ジャズオーケストラの魅力を楽しめた。
⑨のタンゴは抑えた地味めの歌唱のはずだが、いつもとは別のCDかと思うほどビビッドで積極的な感情の表出が聴き取れた。
⑤の1曲目は、ソロ楽器とバンドの全奏が混在して試聴には格好だが、音の迫力という点でも、我が家では十分以上。ジャズオーケストラの魅力を楽しめた。
⑨のタンゴは抑えた地味めの歌唱のはずだが、いつもとは別のCDかと思うほどビビッドで積極的な感情の表出が聴き取れた。
スターリングに関しては、「Triode TRV-A300SE」、「Mingda MCA368-B902」ともつなぎ替えて聴き比べたが、「TJ34-P」はどの音源に対しても余裕のある駆動ぶりで、スケールが大きく、色彩的な描き分けが音楽を聴く喜びを盛り上げてくれた。
比較しながら聴くと、「TRV-A300SE」では音楽がスリムでこじんまりとまとまってしまう。透明感はあるが、低域の充実を欠くため、音源によっては高域が耳ざわりに聴こえた。単独で聴いていたときには感じなかった不満点が生じて複雑だ。
一方、「MCA368-B902」は、対照的に名誉回復。SL-6Sというハイパワーのトランジスタアンプを前提にしたスピーカーでは少々腰砕けだったが、スターリングでは堂々とPPアンプと渡り合った。KT-90はこうでなくてはいけない。音色の美しさでも、「TRV-A300SE」を上回っていた。
さあどうするか。タンノイを鳴らすということだけをとれば、スケールの雄大さで試聴アンプに一歩譲るものの「MCA368-B902」でも十分。より小型のスピーカーたちを楽しく聴くとか、落ち着いて美しいたたずまいの真空管アンプを置きたいということに視点を移すと、「TJ34-P、買った!!」と声をあげたくなる。そのための10諭吉はもったいないとも言えるが、機器を減らす強制力になってくれるなら、総合的には妥当な選択かも。
何より、パーツを自前で買い揃え、この仕上げで組み上げようとすれば、20諭吉を軽く超えてしまいそうだ。中華アンプのコスパ、恐るべし。
もちろん、アンプ製作技術のない私には最初からムリだが、賢人・こばちゃんなりのサポートを受けて、頭のなかで妄想してみても・・・ということである。
と、内心は決定済みであるが、工業製品として気になる点があったので、その点の回答待ちという含みを持たせて、ともかく現品を返却した。
なお、言及していたフロントの木質の件だが、現品が「花梨(かりん)」、写真のくっきりしたものは「ゼブラウッド」で別仕様との回答をいただいた。こうした回答も含めて、このアンプを取り扱う販売店(前記事にリンク)の対応は非常にていねいかつ正確なもので、取引上何の不安もない相手先だと思う。製品保証は2年。万一、不具合が生じても誠意をもって対応してくれるに違いない。
手持ちのアンプやスピーカーの素性見直しも含めて、実に意義ある試聴体験をさせていただいた。店頭での試聴では、この何分の一かの情報しか得ることができないだろう。貸出元に感謝である。m(_ _)m